- 歯科技工士法違反について知りたい
- 歯科技工士免許を持っていないのに詰め物を作ってる
- 歯科技工所で働いているアルバイト又はパート従業員の方
今回は「歯科技工士法違反のこと」について紹介したいと思います。
歯科技工所にてアルバイトやパート従業員として働きながら、「歯科技工士免許」をお持ちではない方へ。
真面目に働いているにも関わらず、ある日突然「書類送検された」とあってはたまりませんよね。
会社の人に言われたままのことをして、自分が書類送検されるなんてあるわけがないと思うかもしれませんが、以前、ある会社で社長や従業員の方達が歯科技工士法違反で書類送検されるという事件がありました。(現在は不起訴処分とされています)
実は歯科技工物(詰め物など)を作る際には、歯科技工士免許が必要となります。
従業員の方達が知っていたのかどうかは分かりませんが、このようなことにならないためにも、自分の身は自分で守らなければなりません。
一体何をすることが歯科技工士違反となるのか、知らないうちに犯罪を犯してしまわないよう、この記事を読んで知っていただければ幸いです。
それではさっそく見ていきましょう!
歯科技工士法とは?
歯科技工士法とは、歯科技工士の職務・資格などに関して規定した法律であり、歯科三法として定められた(歯科医師法、歯科衛生士法、歯科技工士法)法律の一つです。
歯科技工士さんは皆、歯科技工士免許取得にあたり、学校の授業にて「関係法規」という授業で、この法令について学んでいます。
内容としては、歯科医師から渡される「指示書の保存義務」や、患者さんのことについての「秘密を守る義務」等々。
その中でも特に表沙汰になりがちで気をつけなければならないのは、第四章 十七条の「禁止行為」について。
第四章 業務
(禁止行為)
第十七条 歯科医師又は歯科技工士でなければ、業として歯科技工を行つてはならない。
e-Gov法令検索より
歯科医師以外には、歯科技工士免許を取得し、はれて歯科技工士となった者でなければ、歯科技工物(詰め物など)を作ってはならないということです。
もし、歯科技工士法違反に該当する行為とみなされた場合は、書類送検されることにもなります。
だからこそ、歯科技工士免許を持っていないアルバイトや、パート従業員の方には次に記載する内容には手を付けないよう、気をつけていただきたいのです。
歯科技工士法違反に該当すること
では実際に書類送検されたことのある、事件の内容から見ていきましょう。
※現在、こちらの会社は不起訴処分となっております。
書類送検されたという内容を見ると、無資格者であるパート従業員に「歯のかぶせ物」や「詰め物」を作らせていたということです。
しかし、無資格者がそう簡単に「歯の詰め物」などを作ることができるとは思えません。
そこで新聞記事の方をよく見ると、「補てつ物」計十数個の研磨などをさせたとあります。
補てつ物(銀歯や詰め物)の研磨をさせていたということは、最終的な仕上げ作業を素人に任せていたということになります。
これは元歯科技工士の僕からすると大問題です。
理由は、以下の通り。
- 磨き残し部により、プラークが溜まりやすくなる
- 磨き過ぎによる捕てつ物と歯の隙間へ、物が挟まりやすくなる
- 患者さんが噛んだときの調整量が適正ではない
歯医者さんで補てつ物(銀歯や詰め物)が完成した後、紙のようなものを噛まされ「カチカチと噛んでください」と、言われますよね。
あれは完成した補てつ物(銀歯や詰め物)の高さを、丁度いいものにするための確認作業です。
この時点で高い(あたりが強い)と判断された場合は、歯医者さんがその場で削って調整をします。
免許を持った歯科技工士が、調整をしながら研磨をして仕上げたものでも完璧にはいかないのです。
これを無資格者である素人が仕上げたものを口に入れるなんて、リスクが高すぎます。
歯科技工士は、このようなリスクを患者さんに負担させることがないよう、日々技術の研鑽を重ねた上で歯科技工士免許を取得しているのです。
例え最終チェックは有資格者がしていたとしても、歯科技工士法違反に該当することには間違いありません。
もし今あなたが、このような補てつ物(銀歯や詰め物)などを触るお仕事をされているのなら、すぐに止めてください。
そしてもしこのような作業を強要されるのならば、「歯科技工士免許を持っていないので、できません」と、はっきり断りましょう。
無資格者による研磨作業は、歯科技工士法違反です。
補助的な作業でも歯科技工士法違反?
書類送検された社長さんは、「補助的な作業だったので、無資格でもいいと思った」と、おっしゃっていたようですが、補てつ物(銀歯や詰め物)を磨く作業だけでもNGとされるのならば、患者さんの印象(歯型)に石膏を流す作業(模型作り)も歯科技工士法違反になるかと思いきや、石膏注入までは歯科医院にて歯科助手さんが行っているところが多く、この辺りまでは大丈夫なようです。
この患者さんの印象(歯型)に石膏を流し、固まったものを補てつ物(銀歯や詰め物)が作りやすいよう、「模型作り」という作業を行うのは、歯科技工学校でも一番最初に覚える基礎の部分です。
さすがに歯科助手の方でもここから先の、固まった石膏を削ったり、加工するようなところまでを作業してしまうと、それは歯科技工士法違反になるのではないかと思います。
もし、無資格者に歯科技工作業をさせるのなら、
- 補てつ物(銀歯や詰め物)を磨く
- 石膏注入以降からの模型作り
おそらくこの2点が主な仕事になるでしょう。
どちらも簡単な作業ではないのですが、自費診療の補てつ物となると格段に高い技術が必要となるため、どこの歯科技工所でも無資格者に触らせることはないはずです。
このような理由からも無資格者にさせる仕事内容とは、保険適用の補てつ物を磨くことや、石膏注入以降からの模型作りが主となると思います。
線引きの難しいところがあるかとは思いますが、とにかく何かを加工することをしてしまうと、歯科技工士法違反になる可能性があると覚えておいてください。
無資格者に歯科技工作業をさせる意味
歯科技工で儲けるためには、2つの方法があります。
- 自費診療の補てつ物を作製する(インプラントやメタルボンド)
- 他社より安い技工料金で保険適用物を大量に請け負う(銀歯など)
②に関しては自転車操業状態となるため、歯科技工士が辞めていく最大の原因ともなり、絶対に避けたいところですが小さな歯科技工所ではそうもいきません。
歯科医院との取引の中で、保険適用の仕事をタダで請け負う代わりに、自費診療の補てつ物の仕事をいただくなんてことはよくあるからです。
この場合、保険適用の補てつ物を一から歯科技工士に作らせていては利益圧迫ともなるため、経営者としては時給の安いアルバイトやパートの方に手伝わせてしまおうという魂胆なのだと思われます。
以前、僕が働いていた歯科技工所でも、退職した後釜にとアルバイトを雇うと言っていましたが、今思えば完全に歯科技工士法違反ですね。
歯科技工士法違反が発覚する理由
もうこれは元歯科技工士の立場から正直に言わせてもらうと、内部告発以外にないと思います。
歯科技工業界自体がブラックであるため、退職する人の多くが会社に対して何らかの恨みをもっていることが多いです。
更に、無資格者に歯科技工作業を行わせるような会社は、それなりの環境に置かれていることが想像できます。
このことからも、歯科技工士法違反が発覚する理由は、「内部告発」が濃厚かと思われます。
まとめ
- 歯科技工物(詰め物など)を作る際には、歯科技工士免許が必要
- 無資格者が歯科技工作業を行うのは、歯科技工士法違反‼
- 歯科技工士法違反とみなされた場合、書類送検された実例あり
- 特に「模型作り・研磨作業」は無資格者にやらせがち
- 何かを加工するようなことをすると、歯科技工士法違反になる可能性あり
- 歯科技工士法違反が発覚する原因は内部告発が濃厚
元々、技工料金自体が低価格で設定されているところを、他社との奪い合いによる泥試合の中で、何とかして利益を出そうとする企業努力は涙ぐましいところもあります。
しかしだからといって、犯罪を犯してまで儲けようとするのは逸脱行為として処罰を受けることにもなるので注意が必要です。
あなたが無資格者として歯科技工所で働いているのなら、ついうっかり歯科技工士法違反を犯してしまわないよう気をつけてください。
見ている人は、見ています。
では、また。